民俗芸能に関する椎葉村の取り組み
(宮崎県椎葉村)


 宮崎県北西部、九州山地の中央に位置する椎葉村は、1,000mを越える険しい山々に囲まれ、村の96%を山林が占める林業が基幹産業の山村です。平家落人伝説を伝える村で、古くから狩猟を営み、かつては焼畑を中心に生活していました。現在でも独自の文化を維持し、神楽、臼太鼓踊、ひえつき節をはじめとする民謡、民話等、古くから伝わる慣習や伝統文化を大切に継承しています。
 民俗学の創始者といわれる柳田國男が明治末に来村し、狩猟伝承を纏めた『後狩詞記』を出版したことは著名なことですが、神楽の存在は高千穂の陰に隠れて長いこと知られていませんでした。昭和39年に当時国の文化財保護審議専門委員であった本田安次先生が本村を訪れたのがきっかけとなり、神楽の存在が知られることとなりました。非常に珍しいことから、昭和56年から4年間、本田先生を団長とする椎葉神楽調査団が結成され、全国的にも貴重な民俗芸能であることが明らかになり、平成3年には国指定重要無形民俗文化財となりました。
 当時は、本村の基幹産業である農林業の衰退とともに、過疎化による急激な人口の減少で、伝統文化の保存が危惧されていた状況でした。そこで、村の文化遺産を継承発展させ、村の活性化を図るために、村民総ぐるみの「平家まつり」や「ひえつき節日本一大会」、子ども会育成会による「子ども郷土芸能発表大会」等の行事を取り組みはじめました。特に子ども会育成会の活動の存在は大きく、子ども・保護者・地域社会が一体となり、現在でも神楽等の伝統芸能の保存継承に貢献しています。
 また、村では、文化遺産を地域資源とし、さらに地域の活性化を図り、これらを後世に伝えようという機運が高まり、全国的にも珍しい椎葉民俗芸能博物館を平成9年に建設しました。
 開館後は、次の三点に力を入れて民俗芸能の保存継承に取り組んできました。まず、一点目は、「調査・記録作成の充実」で、毎年、古文書・道具類等の調査や写真・映像の記録を行っています。こういった基礎的データを元に、神楽の復活や臼太鼓踊の中絶していた演目の復活にも携わってきました。道具の伝承では、椎葉には今でも太鼓を作る技術伝承者が健在で、地元の民俗技術を通して文化の継承発展にも努めています。
 二点目は、「後継者の確保と育成」で、定期的に民俗芸能の公演会を行い、公開の機会を作っています。平成16年度は、「後継者育成のための公開事業」を行い、広く後継者を募ろうという試みを行いました。
 三点目は、「観光との連携」で、村内のイベントや村外からも芸能公演を依頼されることが多くなり、博物館としては「本来の姿を見ていただく」といった観点から、地元で行われるお祭りに少しでも近づけるような形となるよう関係機関との連携をとっています。
 本村は依然として過疎化・高齢化が進んでいますが、先祖から脈々と継承してきた伝統芸能を絶やすことなく後世に伝えることが今に生きる我々の使命であると考えます。本村では、現在いのちかがやく森林文明郷「かてーり(注)の里・椎葉」をめざして村民一体となって文化遺産の保存継承に努め、村づくりを推進しています。

(注)「かてーり」とは、古くから行われてきた互助共働の仕組みのこと。

 椎葉神楽

 子ども郷土芸能発表大会


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