庄原市の民俗芸能
(広島県庄原市)


 中国地方中央部、面積1,246.6kuの庄原市は、島根県・鳥取県・岡山県と県境を接します。北部に「イザナミノミコト」の陵墓伝承をもつ比婆山御陵(1,264m)など標高1,200m級の中国山地が、南部に標高300m前後の吉備高原面がひろがります。
 中国山地を貫き山陰へ注ぐ江の川水系と、瀬戸内へ注ぐ成羽川(東城川)水系とによる陰陽の接点として、古くから独特の文化形成がなされてきました。また、古来より鉄の産地として知られ、近世の「タタラ製鉄」で山を掘り崩し砂鉄をとった「カンナ流し」の遺構も多く残ります。先人は、カンナ流しによる大量の土砂で谷を埋め、水田に変えて米をつくりました。
 このような神話・交流・製鉄・農耕といった多彩な背景をもつ豊かな歴史環境のもと、市内には国・県・市あわせ16件の指定無形民俗文化財があり、保有団体等により大切に継承されてきました。市も、文化財保護の一環として団体の補助に取り組んでいます。
 平成14年指定の重要無形民俗文化財「塩原の大山供養田植」は、東城地域の小奴可・塩原に中世以前から伝わるもので、田植おどり・供養行事・しろかき・太鼓田植・お札納めの5行事からなります。4年に1度、伯耆大山の大仙社(「大山智明大権現」)を勧請した多飯ケ辻山(1,040m)へ、牛馬の供養・安全、五穀豊穣、家内安全を祈願する塩原地区の人々によって奉納されます。
 平成18年5月28日の現地公開では、西日本各地からの多くの見学者が見守る中、小奴可地区芸能保存会を中心に、古式にのっとり盛大に行われました。
 「比婆荒神神楽」は、昭和54年指定の重要無形民俗文化財です。西城・東城地域に中世から伝わる地縁組織「名」では、祖霊をまつる「本山三宝荒神」へ2昼夜の「小神楽」を随時奉納し、7・13・33年目の式年には4昼夜もの「大神楽」を奉納してきました。生活様式が変わった現在、大神楽は2昼夜で行われます。鎮魂の要素を残し、託宣(神がかり)神事を伝える点で貴重です。
 平成16年12月4日〜5日、「小室名本山三宝荒神式年大神楽」が33年振りに行われました。この時は、大当屋・小当屋を民家が努めあげ、昭和54年の「真安名大神楽」以来のみごとな大神楽でした。
 平成19年2月1日、各保有団体・庄原市文化財保護審議会・庄原市文化協会が連携し「庄原市民俗芸能振興協議会」が結成され、本市は、民俗芸能に関する将来展望に新たな局面を迎えようとしています。11月25日には市内の指定民俗芸能が一堂に会する「第1回庄原市民俗芸能大会」を開催する運びとなりました。
 地域・保有団体・行政の協働によって、文化財を次世代へ伝える全市的取り組みに着手した本市ですが、過疎化・少子化が著しく進行する中、後継者の確保等、課題も多く残っています。  

 塩原の大山供養田植      比婆荒神神楽   


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