横芝光町の民俗芸能
(千葉県横芝光町)


 横芝光町は太平洋の波が洗う九十九里浜の中ほどに位置し、平成18年3月に山武郡横芝町と匝瑳郡光町が合併して新しくできた町です。町の中央を流れる栗山川は、かつて旧両町の境であったと同時に、上総・下総の国境でもありました。そのため川を挟んで文化・習慣の違う面を指摘されますが、同じ九十九里文化を有しているということから、さまざまなところで共通性も見られます。その共通性を民俗芸能で見ることができます。  
 横芝光町の民俗芸能は、国指定重要無形民俗文化財になっている「鬼来迎」がまず挙げられ、町指定では神楽や梯子獅子など4件、無指定でも里神楽など2件があり、この地域が九十九里平野の中にあって純農村地帯であるところから、五穀豊穣と災害退散を祈願した民俗芸能が多いと思われます。しかしながら、本町においても民俗芸能の継承が年々困難になってきて、上に挙げた中にも数年前から演じられなくなったり、すでに廃れてしまったものも多々あります。そこで町では、現在も定期的に演じられている民俗芸能を支援するため、指定、無指定にかかわらず各保存会に活動を支援するため、町独自で補助金を毎年交付しています。また、多くの観客に来てもらうため、町広報をはじめ、メディアを通じての広報活動や、上演に際して町民ボランティアの支援も得ています。    その中で最も際立っている民俗芸能が、虫生地区広済寺境内で行われる「鬼来迎」です。鬼来迎は他の神楽などとは異なり、全国的にも珍しい仏教劇であるところから、昭和51年に国指定になっています。その内容は大序、賽の河原、釜入り、死出の山の地獄の光景を映した4段と、和尚道行、墓参、和尚物語の広済寺縁起譚の3段の合計7段からなっています。しかし、今日では地獄の前4段のみが、毎年旧盆があける8月16日に広済寺施餓鬼会の後に上演されています。これは地獄に落ちた亡者が恐ろしい鬼の責苦に遭う様を、観客に見せることによって、仏教の因果応報を説き、その信仰を深めることのみによって救われることを、わかりやすく伝えたものであるといわれています。おそらく中世の新仏教が庶民に浸透したときに始まったと思われ、縁起譚から推定すると鎌倉後期から室町前期ころと推定され、利根川下流域に広まったといわれますが、現在は本町の広済寺のみに残っています。
 この鬼来迎、残暑厳しい8月16日に行われますが、毎年町内外から多くの観客が訪れ、普段静かな農村にこの日1日だけは賑やかになります。その多くの観客に心地よく見てもらうため、昨年から町とふるさと歴史ロマン研究会のボランティア協力を得て、簡単な客席の設営を始めました。今後、このようにボランティアの協力を得ながら、町全体で民俗芸能が絶えないよう、その活動への支援を推進しています。  

    鬼来迎釜入り場面     鬼来迎賽の河原場面

    宮内神楽        中台梯子獅子      


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